CDSの仕組み

newsweekhttp://plaza.rakuten.co.jp/uki5496/diary/200810130000/より貼り付け

金融危機の元凶はJPモルガンが生み出したモンスター、クレジット・デフォルト・スワップの無節操な濫用だ

 それは、米金融業界の大物たちの週末の儀式だった。太陽のあふれるリゾートで日ごろのストレスを吹き飛ばし、世界の支配者としての成功を盛大に祝う。ヨットパーティーにビキニ姿のモデルたち、1本1000ドルのシャンパンなどをイメージすればいい。

 なかでも、94年にJPモルガン(当時)のバンカーたちがフロリダのボカラトン・リゾート&クラブで過ごした週末は、ウォール街の伝説になっている。騒々しいパーティーもあったが、それだけではない。彼らはピンク色の壁のスペイン風リゾートで週末の大半を会議室に引きこもり、銀行業の歴史と同じだけ古い問題の解決に取り組んだ。誰かにお金を貸したとき、それが返ってこないリスクをいかに軽減するか、というものだ。

 当時、JPモルガンの資産は企業向けや外国政府向けの数百億ドルの貸し出しで膨張していた。問題は、連邦法の定めで、それらの融資の貸し倒れリスクに備える準備金として、巨額の自己資本を積まなければならないことだ。利益を生まない金である。

 バンカーたちが思いついたのは、ある種の保険商品だ。貸し倒れた場合の元利金の支払いを第三者に保証してもらい、代わりに銀行は保険料を払う。そうすれば、JPモルガンはリスクをバランスシートから切り離し、準備金を取り崩して商売に回すことができる。

 この仕組みが「クレジット・デフォルト・スワップCDS)」で、デリバティブ金融派生商品)の一種だ。CDSのアイデア自体はその2、3年前からあったが、大きな取引をしたのはJPモルガンが最初だった。同社は90年代半ばに「スワップデスク」を設置、CDSの市場を作るためにマサチューセッツ工科大学(MIT)やケンブリッジ大学から若い数学者や科学者を雇い入れた。

 数年後には、安定的な収益を確保しながらリスクを回避する手段として、CDSは最もホットな金融商品になった。「(原子爆弾開発のための)マンハッタン計画にかかわった人たちの話も聞いたことがあるが」と、当時JPモルガンの専務取締役をしていたマーク・ブリッケルは言う。「あのときボカラトンに集まったわれわれにも、何か大変なものの創造に立ち会っているという実感があった」

 だが、40年代当時のロバート・オッペンハイマーや部下の核物理学者たちがそうだったように、ブリッケルと同僚たちも、自分たちが開発しているのがモンスターだとは気づかなかった。今日、経済がよろめきウォール街が廃墟と化したのは、彼らが14年前に解き放った怪物に大きな責任がある。

■金融業界が作った「大量破壊兵器

 アメリカ最大の保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は、投資銀行や保険会社などに対して保証していた140億ドルにのぼるCDSの支払いに行き詰まり、納税者のお金で救済された。この1年間の金融システム危機の原因の多くは、元をたどればCDSに行き着く。その市場は62兆ドルに達していた。ニューヨーク証券取引所に上場する全株式の時価総額の4倍近い額だ。

 著名投資家のウォーレン・バフェットCDSを「金融版の大量破壊兵器」と呼んだのには理由がある。CDSは企業対企業の相対取引で契約されるため、政府の規制は及ばないし、取引報告を集約する場所もないので本当の市場価値を知ることができない。

 その結果、数十億ドルもの不透明な「暗黒物質」が金融市場の頭上に垂れ込めることになった。CDSならず者国家核兵器のように世界中に拡散し、今は注意深く秘匿されている。多くの金融機関のバランスシートを吹き飛ばすのも時間の問題だ。

 CDSのいちばん初期の取引の一つは、97年12月にJPモルガンが行った。同社はフォードやウォルマートなど大企業向けに実行した300件、計97億ドルにのぼる融資を調べ、最も貸し倒れリスクの高い上位10%を特定。それを投資家に売却した。

 それを可能にしたのは、MITを出てJPモルガンスワップデスクで働いていた当時25歳のテリ・デュホンだ。この部門は、のちに世界的な大銀行の幹部を多く輩出し、「モルガン・マフィア」として知られるようになる。「銀行が信用リスクを資産から切り離し、保険会社や年金に肩代わりさせることに成功した」と、今はロンドンでデリバティブコンサルティング業を営むデュホンは言う。

 その後まもなくCDSは、リスクの高い中南米やロシアなど新興市場への投資も怖くなくなる保険として使われはじめた。01〜02年にエンロンワールドコム粉飾決算の挙げ句に巨額債務をかかえて倒産すると、企業の内部崩壊に対する自己防衛の必要性も再認識され、CDSは打ってつけのツールになった。00年に1000億ドルだった市場規模は、04年には6.4兆ドルになった。

 そして住宅ブームがやって来る。FRB(米連邦準備理事会)が利下げを繰り返し、アメリカ人が歴史的なペースで住宅を買いはじめると、住宅ローン債権を担保にした証券化商品は新たな有望投資先になった。銀行やヘッジファンド、年金などあらゆる金融機関がこれを購入し、彼らの多くがその債務不履行に備えてやはりCDSを購入した。
「一連の仕組みはきわめて魅力的で、猫もしゃくしも利用した。その結果、CDSの市場は巨大化した」と、かつてシティグループのクレジット・スワップ部門を率いたロアン・ダグラスは言う。

 AIGのような会社の取り扱い商品はすぐに、火災保険だけではなくなった。彼らはCDSを売ることで、住宅ローンの保証もはじめた。AIGが政府に救済されたときまでに、同社のCDS保証残高は4400億ドルに達していた。

 AIGの決定的な過ちは、伝統的な保険の手法をCDSにそのままあてはめたことのように思える。従来の保険では、一つの事故と他の事故の間に相関関係はない。隣人が車を衝突させたからといって、自分もそうなるリスクが高まるわけではない。

 だが、債券の場合はまったく話が違う。一つが債務不履行になると、連鎖反応で他の債券も債務不履行に陥る確率が高まる。投資家は臆病になって資金を引き揚げ、市場はパニックに陥り、銀行は貸し渋りに走る。

 そして住宅ローンの証券化商品が債務不履行に陥りはじめると、AIGは何十億ドルもの元利金を補償しなければならなくなった。AIGにそんな資金はないことは、たちまち明らかになった。

 政府が介入してAIGを救済したのは、AIGCDS市場のいわば最後のとりでだったからだ。銀行やヘッジファンドCDSの売り買い両方を行い、どちらか一方で損をしてももう一方で得をするポジションだったのに対し、AIGは保証を提供する一方だった。もしAIG債務不履行に陥れば、AIGからCDSを買っていたすべての金融機関が損失を被り、信用危機に陥っていただろう。

■銃を規制するならCDS規制もあり

 CDSがこの危機で果たした役割を考えれば、政府が規制に乗り出すのも想像に難くない。「悲しいことに、CDSは汚名を着せられた」と、デュホンは言う。「誰かが撃たれたときに、それを銃のせいだと言うのに似ている」

 だが、AK47自動小銃の販売を規制すべきだと考える人がいるのと同じように、CDSも使い方を誤れば危険だという議論は成り立つ。「CDSがあることで、人々はトラブルに巻き込まれやすくなった」と、スタンフォード大学ビジネススクールのダレル・ダッフィ教授(金融論)は言う。

 CDSは乱用されたが、それでも有効なツールであることには変わりなく、葬り去ってはならないとダッフィは言う。「仮にCSDを法律で禁じたとしても、金融技術者がすぐに新手法を編み出して規制をかいくぐるだろう」

 将来の危機をいかにして食い止めるか頭を悩ませているウォール街と米政府が、せめて小説『フランケンシュタイン』を再読してくれることを祈ろう。

(C) 2008 Newsweek, Inc. 2008 Hankyu Communications Co., Ltd.

CDSの影響は 何回か紹介してきてるが、現在デリバティブの想定元本は、世界で5京円(兆の1桁上)だ。

そのうち CDSの想定元本は約0.6京=6000兆円(日経記事では 6月末で5400兆円とか数字がいくつかある。統計があいまいなので、余計不安を招いている)になり、コレは世界のGDP総額に匹敵する。

(1)米リーマン対象のCDS清算、国内に損失波及も(日経)

 経営破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズを対象にしたクレジット・デフォルト・スワップCDS)の清算に伴って国内外の金融機関に大きな影響が広がる可能性が出てきた。リーマン関連の想定元本は4000億ドル(約40兆円)もあり、CDS清算では過去最大規模。思わぬ損失を迫られることから、金融市場で不透明感が高まる一因になっている。

 CDSとは企業が倒産して、出したおカネが返ってこなくなる可能性を想定して取引する保険契約。投資家が保証料を払って契約すると、企業倒産時に保証料を受け取った相手から元本の補てんを受ける。リーマンの場合は10日に清算価格が元本の約8.6%で決定した。この契約をしていると、元本から差し引いた残りの90%強も保証される。逆に売り手は多額の損失を受ける。(18:07)

(2)リーマン対象金融派生商品清算価値は8・625%」(読売)

 【ニューヨーク=池松洋】経営破綻(はたん)した米証券大手リーマン・ブラザーズを対象にした、金融派生商品デリバティブ)のクレジット・デフォルト・スワップCDS)の清算価値が10日、元本の8・625%に決まった。

 金融派生商品を扱う事業者の業界団体「国際スワップデリバティブス協会」(ISDA)が発表したもので、破綻後に暴落したリーマンの社債の価値などに連動する形で決まったという。

 市場推計ではリーマン関連のCDSの契約残高(想定元本)は約4000億ドル(40兆円)。この9割以上が損失となり、リーマンの社債保有者などからCDSを引き受けた金融機関などがかぶることになる。ただ、契約時の手数料などで損失の一部はカバーされる可能性がある。

 CDSは、企業に融資をした金融機関や、企業が発行した社債を購入した投資家が、焦げ付いた場合の損失を肩代わりしてもらうために、他の金融機関などと行う金融取引だ。(2008年10月12日01時32分 読売新聞)

(3)リーマンCDS40兆円 実損は8000億円程度との見通し(証券新報ダイジェスト )

 ブルームバーグニュースや日本経済新聞の報道によると、10日に行われたリーマンブラザーズ債に対するCDS4000億ドル(約40兆円)の清算清算価値は8.625%となった。残りの約36兆8000億円は損失となるが手数料やヘッジで、売り手の金融機関の損失は全世界で7000億円〜8000億円程度との業界団体の見方がある。国内に余波が出るとの報道もあるが、金曜日の米市場はこの見通しで株価が戻したとの観測が流れていた。(2008年10月12日(日) 01時39分 )

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(1)(2)の記事
⇒リーマンCDSの元本は40兆円。大部分が損失となる(リスクを引き受けた人の)。

(3)の記事
⇒リーマンのCDSの元本は40兆円。損失は7000億〜8000億程度の見方。

(1)(2)と(3)言っていることが違う気が??損失が40兆と8000億では全然違うし。

ということで調べてみました・・・が難しくてよく分からない。けど分からないなりに書いてみました。

ただ、書いている本人がよく分かっていないので、非常に意味不明な文章になってしまっています。
内容も怪しい部分もあるので、ちょっとした参考くらいに留めておいてください。

●(現時点の)結論

・リーマンの社債の価値が元本の10%
CDSによる損失の予想が7000億〜8000億

どゆこと?というのは以下で。

CDS発行について

CDSは債権者・債務者でなくても発行可能。「リーマンが倒産したら1億円貰える賭けを100万円でやらない?」みたいな。
よって、別に債権者・債務者でなくても発行可能。
よって、債務残高≠CDS残高となる。(リーマンの場合、社債残高15兆に対しCDS残高40兆)

CDSを使うメリット

ココが分かりやすかったです。

ポイントとなるのは、上記記事の↓の部分。

>貸し倒れた場合の元利金の支払いを第三者に保証してもらい、代わりに銀行は保険料を払う。そうすれば、JPモルガンはリスクをバランスシートから切り離し、準備金を取り崩して商売に回すことができる。

ここは「リスクをBSから切り離し」の解釈をどう考えるか、以下3つ説があるみたいですが、(1)が有力っぽいです。

 (1)引当金を計上しなくてもOK
 (2)自己資本何%以上必要のBIS規制の分母から除外
 (3)債権そのものをBSから除外←これはないと思うけど…。

つまり、お金を貸す際に計上が必要な引当金を、CDSを使うことで計上しなくてもOKとなると考えられます。

CDSの使い方(例)

「A社がリーマンの社債を100億購入。その全額をB社にCDSで引き受けてもらう」
「B社がリーマンの社債を100億購入。その全額をA社にCDSで引き受けてもらう」

お互いCDSで保障をし合う。こうすることでA社/B社それぞれが引当金の計上をしなくても済む。
(ここで引き受けたCDS引当金は必要ないの?というのが疑問ですが、現時点では「計上が必要」との情報は確認できませんでした)

リーマンが潰れたら、A社B社のCDS保障の相殺が起こりCDSの保障金額はゼロとなる。
⇒こういった相殺の結果がCDS元本40兆円に対し、損失が2%(8000億)と考えらます。