迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか (単行本)

人は病につぎつぎに侵されることで進化の早送りを行ってきたと著者は持論を展開している。

「人類のゲノムは、ある特定のレトロウィルスによって、別のレトロウィルスに感染しやすいように変えられた。ヴィラリアルによれば、アフリカの霊長類に「別のウィルスに延々と感染する」能力がついたことで、人類は進化の「早送り」ボタンを手に入れたのだという。他のレトロウィルスにさらされることで高速変異を可能にする機能だ。この能力のおかげで、僕たちはサルから人間へと一気に進化することができたというのだ。」

病気のウィルスと宿主の人間は相互に影響しあいながら共に高速に進化することができた。それは老化という現象でさえも同じである。人類は老化がプログラムされた寿命のある製品であると著者は市場にたとえている。製品寿命が有限だから、新商品が普及できるというたとえだ。

「第一に、この方法は新製品や改善版を市場に出す余地を生む。第二に、この方法はあなたに改善版を買わせることになる。アップル社は数年前にiPodを開発したとき、計画された旧式化の考え方を全面的に採用した。取替え不可能な内蔵電池の寿命を一年半ほどに設定しておいて、その電池が切れたら消費者に改善版の新モデルを買わせるというやり方だ。」

つまり、生物の寿命は自然淘汰による進化の速度を決定する。種の進化としては、古い世代が死んで新しい世代に入れ替わることこそ重要なのだ。人間が2倍長生きすると、進化は2倍遅くなる。だから進化によって不死身になることは、まったく期待できない話なのである。

情報考学より